毎日のようにレッスンがあり、土日は6時間レッスン。
身体から疲労が抜けないで、上達が思うように行かない。
そこでもっとレッスンを増やしたらいいものか…
そんな悩みを抱えている若い生徒さんがいます。
どうしたら良いでしょうか?
ロシアの国立バレエ・アカデミーでは、生徒の疲労についてどのように考えているのか少し探ってみます。
まずは、ロシア・メソッドで有名なアグリッピナ・ワガノワ先生のお話から…。
「もしも舞踊手のあるクラスやグループに過労が見られ、もし彼女たちにとって、仕事が負担になりすぎていることを知ったなら、ときおり私は、二週間ほどはレッスンで容易な動きのみを与え、生徒たちをきわめて慎重に指導する。しかしそこで、このような負担が緩和され、仕事が少なくなったり、何らかの出来事のためにエネルギーが湧いてきたりして、いっそう精力的な努力を行う必要性が感じられたときには、レッスンをより、緊迫したものとし、時間を有効に使って、短い時間に困難なものをどんどんやらせるのである。要するに、レッスンによる益を逆に有害なものにしないために、仕事の条件に対して非常に敏感でなければならない。もしも何らかのプログラムが言い渡されたなら、私ならそれをただ遂行するのではなく、もっと多くのことを行おうとするだろう。だがそれでも、私の義務は女生徒たちの負担を考慮し、現実から離れないようにすることなのである。」
(『ワガノワのバレエ・レッスン』 アグリッピナ・ワガノワ著 新書館 32ページより引用)
この文書は、上級の生徒に向けてのものです。
ここで言う仕事とは、レッスンやリハーサルのことだと思われます。
上級は、公演のためのリハーサルなどが増えて身体的な疲労が溜まりやすくなる年齢です。
大体高校生ぐらいが上級クラスの生徒の年齢層になります。
高校生になって、このように身体的な負担が増えていきます。
ということは、中学生ぐらいまでは身体的な疲労がさほどたまらないようなレッスン構成になっていると考えられますね。
疲労が溜まると上達がしにくいばかりか、怪我の原因を作ることにもなります。
特に小中学生の間は、身体が大きく成長する時期ですから、
成長のためだけにも相当なエネルギーが必要となります。
そのエネルギーをレッスンで使い果たしてしまうと、成長が順調に進まないことにもなります。
年齢と体格、そして疲労の関係を考慮してレッスンをしないと
後々、困ったことになるかもしれないということです。
バレエを通して精神的な成長を促すばかりでなく、
健やかな肉体の成長も促さないといけません。
疲労によって、レッスンが有害なものにならないように
生徒も、親御さんも、そして何よりも教師も考える必要があると強く思います。
参考図書