12月はくるみ割り人形のシーズン。
先日、末息子を連れて、日本を代表するバレエ団のくるみ割り人形の公演を観に行きました。
久しぶりの舞台公演、団長は幼なじみということもあり、期待に胸を膨らませて会場についたのですが、図らずも日本のバレエ界の問題点が丸見えになっていました。
職業柄、私はバレエを観るときはダンサーの上半身ではなく下半身を見ます。
下半身の動きを見れば、上半身をどのように立てているのか判断できるので、下半身だけ見ます。
悲しいかな、踊りそのものを楽しむことはできないですね。(泣)
バレエの動きの基本法則は3つ。
- 移動の法則
- 回転の法則
- 跳躍の法則
この3つのそれぞれの法則に対して、細かい動かし方の法則が存在しています。
脚を前へ運ぶときは、かかとから動き出す。
脚を後ろへ運ぶときは、つま先から動き出す。
とか。
跳躍では、大きいジャンプの手前のつなぎのステップは積極的に移動し、
最後の見せ場のジャンプでは、そのつなぎの助走を最大限利用して跳躍する。
とか。
動きに意味を持たせるためには、この法則は絶対に守らなくてはいけません。
さもないと、動きが、メリハリのないステップの羅列になってしまうからです。
結論から言うと、今回観た公演、残念ながらバレエの法則が活かされていませんでした。
演出は大変素晴らしく、エンターテイメントとしては大いに楽しめたのですが、ダンサーが踊っていたものは、バレエの法則が抜け落ちた踊りでした。
これが日本の現状です。(涙)
世界にはさまざまな流派のバレエがあります。
ロシア派
イギリス派
アメリカ派
キューバ派
フランス派
など。
この中で日本は、なんでも派か なんにもない派、いずれかのケースが多いように感じます。
少なくとも、私のところに相談に来る生徒さんを見ると、大人も子どももたいていこのどちらかです。
なんでも派なら、改善の余地があります。何かを抜けば良いのですから。
「選択と集中」です。
ところが、なんにもない派は、対策に困ってしまいます。そもそもバレエじゃないものをバレエと信じ(こまされ)て学んで来てしまっている訳ですから。
今回観た公演は、残念ながら後者だったようです。
バレエのようでいてバレエじゃない踊り。
これを見た子ども達は、喜び感動するかもしれません(今回もエンターテイメントとしては素晴らしかったです)。
でも、バレエの様式美を体現していないものをバレエと思われてしまっては、今後を危惧せずにはおれません。
様式美を体現するために必要な要素がバレエの法則なのですが、それが抜け落ちてしまっている。
日本の将来のバレエ界を背負っていくダンサーたちには、このスッポリ抜け落ちてしまったバレエの法則にもとづく指導(バレエ教授法)が必要です。
教える側に立つ者として、バレエには西洋文化の様式美があり、その美しさを体現するにはバレエの法則が不可欠だということを発信すること。
それがバレエ教授法を学び教えている今の私がすべきことだと思っています。