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バレエという伝統芸能に今一番必要なもの

歌舞伎は日本を代表する伝統芸能の一つですね。

 

では、バレエはどうでしょう?

 

発祥は日本ではありませんが伝統芸能と呼べるでしょうか?

 

●歴史

歌舞伎にはおよそ400年の歴史があるそうです。(※1)

 

その歴史故に、伝統芸能と位置づけられています。

 

バレエは…

 

ルネッサンス期のイタリア発祥のダンスが 、バレエの起源とされています。

 

その後、フランス、ロシアに渡り、現在では世界中に広まっています。

 

ロシアでは、ピョートル1世(ロシア皇帝/ 在位:1721年 – 1725年)がフランスで観たバレエを宮廷舞踊に取り入れたとされています。

 

その後、貴族たちによるバレエブームが起き、彼らはフランスからバレエ教師を招いて自宅でレッスンをしていました。

 

その後、1734年にフランスから教師を招いて帝立バレエ学校でバレエを教えるようになり、1738年には一般市民用のバレエ学校が創立されています。

 

それ以降現在までおよそ300年の歴史です。

 

歌舞伎には100年及びませんが、充分に伝統芸能と呼べるものだと思います。

 

この点は歌舞伎と同じです。

 

 

●歌舞伎とバレエの違い

では、違いは何でしょう?

 

一番の違いは、行う人の数。

 

たとえば、カルチャーセンターやスポーツジムで、学べるのはどちらでしょうか?

 

バレエですね。

 

他にも、保育園や公民館、バレエ教室、高校、大学。ほとんど、どの年齢でも、日本各地でレッスンが受けられるほど普及しているのではないでしょうか。

 

それだけ身近な存在だと言えます。

 

地元の歌舞伎教室とか、スポーツジムで歌舞伎レッスンとかまず聞かないですよね?

 

そのせいか、「バレエは伝統芸能」という認識が薄いように感じます。

 

伝統芸能には代々受け継がれている様式美が存在します。

 

この点ではバレエも歌舞伎も何ら変わりはありません。

 

バレエを歌舞伎に置き換えて考えてみればとてもしっくり来ます。

 

歌舞伎には養成学校があり、また世襲制度もあり、様式美が型として継承されます。

 

職業訓練校としての国立バレエ学校があり、また両親がバレエダンサーで、その子もバレエダンサーになるという世襲に近い部分があります。

 

歌舞伎で決められた型を継承するように、

 

バレエでも型を継承します。

 

それぞれに決められた型があって、生徒はそれに従わなくてはなりません。

 

伝統芸能に創作や自己流の入る余地はありません。

 

「私は帰国に際し、それまで定着していた日本の旧態依然としたバレエ教育の惨状に唖然としました。バレエ教師として国家資格が承認されていないこの国においては、舞踊家としての基礎の無い、言ってみればバレエが好きな趣味の方までがしっかりとした教えの知識も無くスタジオを開き、教育に携わっている。その様な状況だったのです。
その状況を見るにつけ、私は誇り高きバレエ文化を継承している者の義務として、次世代の才能ある芸術家を一人でも多く見出さなければならないという思いを強くしていました。
そして2003年、K-BALLET SCHOOLを開校する運びとなったのです。」(※2)

 

K-BALLET COMPANY 芸術監督熊川哲也氏の言葉です。

 

文面から、熊川氏はバレエを伝統芸能として捉えていますね。

 

まず型があり、それを継承することがバレエ教師の役目であると。

 

 

●アマチュア・バレエ

その一方で、伝統芸能ではないバレエも存在します。

 

アマチュア・バレエです。

 

伝統芸能としてのバレエを残しつつ、型にはめられない身体条件に対するアプローチが必要な世界です。

 

最近はさまざまなアプローチが存在し、バレエも多角的に捉えることが出来る時代になりました。

 

その結果、バレエが身近になったのでしょう。

 

ただ、それでも、伝統芸能としてのバレエを理解した上でないと、バレエとは似て非なるものを教えることになりかねません。

 

本質を見誤ってはいけないと強く感じます。

 

バレエが伝統芸能であるという事実は変えることが出来ません。

 

伝統芸能としてバレエを理解すれば、型の持つ意味、それを継承する意味が見えてきます。

 

伝統芸能としてのバレエには、楽なアプローチや楽しいアプローチは存在しません。

 

様式美を表現するための型」を習得する厳しいレッスンを脱落することなく続ける。

 

これに尽きます。

 

そこで大事になるのが、バレエの型をいかにして学ぶか?

 

ここに重点を置くことが出来たら、伝統芸能としてのバレエは、これからもずっと生き続けるでしょう。

 

しかし、日本には、まだその環境が整っていません。

 

ダンサーを育てる環境はあっても、教師を育てる環境が事実上ありません。

 

生徒としてバレエを習得した後、そのまま教師になってしまいます。

 

ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーでは、ダンサーを育てる8年間のカリキュラムを習得した後に、さらに数年間、教授法を学んでからバレエ教師になります。

 

フランスやカナダでも、バレエの教授法を習得する学校を卒業してからでないとバレエ教師にはなれません。

 

そこで何を学ぶのかというと、いかに型を生徒に習得させるかという教師の能力です。

 

日本では、この部分が抜け落ちています。

 

様式美を体現する型を継承する上で、もっとも重要な部分が抜け落ちているわけです。

 

 

●ヨーロッパ人から見たら

バレエはヨーロッパの伝統芸能だから、日本では疎かにしてよいということにはならないはずです。

 

仮に、歌舞伎が海外で型がないまま教えられ踊られていたら?

 

それが本物の歌舞伎だと思い国中で教えられていたら?

 

日本人として良い気分にはならないでしょう。

 

B級映画に出てくる変な日本人を見ているような感覚に近いと思います。

 

ヨーロッパ人にとってのバレエは、私達にとっての歌舞伎と同じなのです。

 

型を知らないまま、もっともらしく教えてはいけないのです。

 

それは、バレエに対する冒涜行為です。

 

バレエを大事にしていない。

 

そして、自分の解釈をあたかも「これがバレエです。」とアマチュア・ダンサーに教えてしまう。

 

●一線を越えた善意

おそらくそれは善意からのものなのでしょう。伸び悩んでいる生徒さんを助けてあげたいと。

 

バレエ教師以外の人達が、それぞれの専門から見たバレエを「これがバレエです。」と。

 

各人の専門から見た場合の解釈は述べることが出来ると思いますが、それはあくまでも外から見た解釈の一つであって本物の「バレエ」ではありません。

 

この一線を越えてしまうのはとても危険です。

 

・バレエの型をどこで学んだのか?
・バレエの教授法をどこで学んだのか?

 

ネットでもリアルでもバレエを教えている教師も教師以外の人もぜひ自問していただきたいです。

 

もし答えられないとしたらバレエを教える立場にいるのかどうか再考が必要だと思います。

 

生徒さんなら、ご自分の先生についていま一度確認されることをお勧めします。

 

これを怠ると、上達しきれずに終わるかも知れないし、怪我の危険性が高くなるかも知れない。

 

●本当の原因と対策

そもそもですが、こういったバレエ教師以外の人達がバレエを教え始めてしまうのは、バレエ教師がバレエを教えていないことが原因です。

 

先述のように、日本にはバレエ教授法を学ぶことなくバレエを教え始めてしまう教師がとても多い、というか、そのパターンがほとんどです。

 

なので、そもそも指導力が不足しています(海外で教授法の課程を修了していないのですから)。

 

その結果、生徒さんが上達できない、何かおかしい、怪我をする、と問題を抱えてしまうのです。

 

その問題を解決しようと助けを求めたところに、「答え」が用意されていると、ついそこに飛びついてしまうのは自然な流れです。

 

だから、バレエを教える先生方が指導力を高めて、生徒さんの伸び悩みを少しでも解消し、今以上に上達させて差し上げるのが一番です。

 

ヨーロッパ人が見ても「ホンモノ」と思えるようなバレエを日本で教えているか、ということになります。

 

その環境を作れるかどうかは、私も含め日本のバレエ教師の指導力にかかっています。

 

そもそも伝統芸能としてのバレエの型を学んできていないのなら、まずはここをしっかり学びましょう。

 

これなくして、アマチュアの生徒さん向けにアレンジすることは出来ないはずです。

 

バレエの法則は、その型を私なりにわかりやすく説明し直したものです。

 

ワガノワ・バレエ・アカデミーで教師が生徒に型を習得させようとするのと同じです。

 

いまの日本では、生徒さんにとっても、教師にとっても最優先で必要な情報だと思います。

 

いずれはバレエを学ぶ生徒も教師も誰もが知っている共通知識になってほしいと思います。

 

その時が本物のバレエが日本に根付いた時になるのだと思います。

 

 

 

参考資料
※1 「歌舞伎の歴史」歌舞伎座のHPより
※2 K-BALLET SCHOOLのHP「ごあいさつ」より

 

 

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