3月28日、かめありリリオホールで開催された
「第1回 NEW GENERATIONバレエコンクール」の審査員でいらっしゃる
福田一雄先生の講演会を聴講してきました。※
「海賊の5つの女性ヴァリエーションの解説」という内容でした。
福田先生から、私が以前から疑問に思っていたことに対する答えを頂きました。
福田先生の講演「海賊の5つの女性ヴァリエーションの解説」は大変興味深い内容でした。
海賊には、女性ヴァリエーションが5つも存在する。さて、どれがオリジナルなのか。
また、なぜこのように5つもヴァリエーションが存在するのか。
作曲家の立場、舞踊手の立場からの考察を交えて、その時代が創り上げた芸術作品の裏話も聴けて、
大変興味深く、勉強になりました。
福田先生は、「第1回 NEW GENERATIONバレエコンクール」の審査員を務められました。
先生の視点は、バレエダンサーやバレエ教師のそれとは違っているようです。
曲に合っているか
ヴァリエーションの背景を知って踊っているか
曲が題名と合っているか(←さすが指揮者と思わせるコメントの数々!で説明していただきました)
題名の意味と役の意味を理解しているか
などに重きをおいて審査なさったそうです。
これは、テクニック重視のコンクールが多い中、画期的なことだと思いました。
役を理解して踊る。
曲を理解して踊る。
これはとても大事です。
バレエ演技法の領域ですから。
さて、福田先生のお話で、会場がちょっとどよめいたことがありました。
「オーロラ3幕、斜めに向かって手を回す腕の動きがありますね。あれは、私は生まれてからこんなに大事に育てられ、年齢を重ねてきました。という意味なんですよ。」
私の周りの席で「へぇ〜、知らなかった」という声が上がりました。
その中には指導者風の方もいらっしゃったようです。
以前、アメリカ オーランド・バレエ団プリンシパルの安川千晶先生を講師に迎え、講習会を開催させて頂いたことがあります。
オーロラ3幕のヴァリエーション指導で、
「この腕は1回の動きで1歳。だから16回行って16歳。私は1歳から16歳まで成長しました、ということを表現しているのよ。」
と、伺いました。
16回手を回すヴァリエーションもあれば、途中で違うステップが入るヴァリエーションもあります。
でも確かなことは、この腕の動きは
「年齢を重ねるということを表現している」
ということ。
その他にも腕を煙のように動かすものがあります。
あの動きは、炎を司る精霊の動きとか、かまどを守る精霊の動きだと聞いたことがあります。
ギリシャ神話に出ている神や精霊などが出てくる踊りなどでは、その動きの持つ意味を正確に理解して踊らないと、ただの運動になってしまいます。
日本には馴染みのない神話ですから…。
でも、これがヨーロッパ発祥のバレエの動きなのです。
私が以前から疑問に思っていたこと。
それは、
表現力を高めるために内観をする以前に、何を表現するかを理解するほうが先なのではないか?
プロ・アマを問わず、日本人ダンサーには表現力が足りないと海外のバレエ関係者に言われることがあります。
ここで言う表現力は「恥ずかしがらずに内面を表に出す」ことではなく、
「意味のない動きは役を表現していない。」
と、私は捉えています。
ただ笑って楽しそうに踊ることを表現と思っていたら、それは大きな勘違いとなります。
これは、即興やコンテンポラリーではなく、バレエ演技法の領域です。
通常、この演技法の概念は、海外では、国立バレエ学校やバレエ団で、先人から口伝されていくことです。
日本で教えるバレエ教師にとって、このバレエ演技法の概念は、一番弱い部分かもしれません。
なにせ、日本語に翻訳された書物が皆無に近い状況です。
テクニックは教科書として翻訳本が出ています。
だから、テクニック重視になってしまうのも仕方ないのですが、
それではバレエ芸術の重要な構成要素を欠いています。
その自覚なく、「これがバレエだ。」と認識しているとしたら、バレエに対して失礼に当たります。
バレエは、芸術です。
身体を使って表現する。
何を表現するか、ここが大きな課題です。
その「何」が分かれば、腕の動き一つとっても、意味が出てきます。
結果、表現力が磨かれていく。
わざわざ、役と関係ない何かを表現しようとしなくてもいいのです。
役を理解し、曲を理解し、踊りとして統合する。
それがバレエを芸術たらしめる根幹だと思います。
※ 「福田一雄」(2016年12月28日 (水) 20:21 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。