
以前、バレエ・レッスン・ピアニストをなさっている方から、とても興味深いお話を伺いました。
それは、
「音を理解していないバレエ教師がいる」
ということです。
「3拍子で指示を出していたはずが、途中からいきなり2拍子になっている」
とか…。
信じがたいというか、信じたくないご指摘です。
レッスン・ピアニストは
「バレエ教師の音への無知」
を先回りして、何事もなかったように修正しながら、音を奏でなければならないのだそうです。
これは大変なお仕事だと感じました。
いつもレッスン・ピアニストがついて、演奏していただけているなら、いいかもしれませんが(ピアニストが修正してくれますから…)、
もしCDなどを使っていたりすると、どうなるでしょう。
教師の指示のおかしさを、誰も修正してくれません。
当然、そのままレッスンが進行します。
この時、生徒さんは何を学ぶのでしょうか?
生徒さんの中には、音楽に詳しい方がいるかも知れません。
あるいは、音楽に詳しくなくても、音取りが自然とできてしまう生徒さんもいるでしょう。
そういう生徒さんがいた場合、教師は自分の音楽に対する理解度の低さを、晒してしまうことになります。
ただ実際には、生徒さんの多くは、それほど音楽に詳しくないかもしれません。
これはこれで問題だと思います。
なぜなら、教師の指示のおかしさに気づきませんので、間違った指示のままでレッスンを受け続けることになるからです。
これでは音楽と一体化したバレエを学ぶことはできません。
二拍子系の踊りなのか三拍子系の踊りなのか無自覚な踊りは、滑稽と言えるでしょう。
この由々しき問題は、バレエ教師の音に対する理解度を高めることでしか解決しません。
でも、当の本人はそこに問題があることに気づいていないので、自分から直そうとすることはありません。
教師自身が、音が取れているかいないか、自覚できていないといけませんが、
その自覚がないまま
「音取りできてますか?」
と聞かれて、
「私は大丈夫な気がする」
という認識だとすると、かなり危ないです。
なぜなら、繰り返しますが、本人には見えないからです。
海外国立バレエ学校では音楽の授業が必須です。
音楽の理解が伴わないままの進級は、できないシステムになっています。
わざわざシステムにしているには、訳があるはずです。
察するに、それほどバレエには音楽の理解が必要だ、ということではないでしょうか?
それなくして、バレエには成り得ないですから。
でも、私の知る限り、日本にはそういったシステムは存在しません。
だから、厳しい言い方かもしれませんが、生き恥を晒すようなレッスンをしているバレエ教師がいるのは紛れもない事実です。
教師が、
「自分は大丈夫」
という根拠を持ちあわせていないとしたら、基本的に音に対して謙虚になった方がいいと思います。
バレエ教師として音楽理論の専門家になる必要は必ずしもないと思いますが、
「バレエ教師に必要な音感」
は、身につけておいた方が良いと思います。
少なくとも、そういう意識でバレエのレッスンを捉え直すことは、とても意味のあることだと思います。
参考図書