夏はコンクールの季節です。
何度か生徒を参加させていますが、
会場では毎回というほど、目にする奇妙な光景があります。
小中学生に人気の演目は何と言っても オーロラ ですね。
でも、今回は、オーロラ の話ではなく、
白鳥の湖 パ・ド・トロワの女性ヴァリエーションについて。
このヴァリエーションは、1幕で踊られ、登場人物の設定は「王子の友人」です。
王子の友人だから、彼女たちは貴族の身分ですね。
決して村娘ではありません。
なのに、
コンクールでは、このヴァリエーションをエプロンつきの衣装で踊る子が結構いるのです。
例えば、エプロンがついたペザントや、ジゼルの友人の衣装を着ているんです。
エプロンがついているのは、村娘と決まっています。
エプロンは「仕事」の象徴です。
だから、エプロンをつけて働くのは、村娘と決まっています。
前述したペザントは、小作人とか田舎者という意味です。
また、チロリアンテープがジグザグに縫われた衣装は、山に住む女の子の象徴です。
(最近は、デザイン性重視でチロリアンテープでないテープが使用されることが多くなっています)
チロリアンとはチロル地方という意味なので、チロリアンテープの衣装はチロル地方(アルプス山脈東部)の住民を象徴していることになります。
エプロンとチロリアンテープで、山の麓に住む村娘 となるでしょうか。
エプロンとチロリアンテープは、貴族 は身につけません。
そんな貴族がいたら、滑稽です。
ちなみに、マリンスキー・バレエでは、パ・ド・トロワの衣装はこんな感じです。
衣装の細部に貴族らしさが醸しだされていますね。
バレエを教えるには、身分に合った衣装がどのようなものか、という知識も必要です。
その作品の時代背景や、人物設定。
そうしたことも全てひっくるめて
バレエ
です。
バレエは、総合芸術なのです。
だから、知っている人から見れば、本当におかしなことです。
踊るだけ
では、バレエにならないのです。
踊りというテクニックの部分ばかりでなく、
衣装やメイク、髪型などにも気を配ってほしいと思います。
たまに、海外のB級映画に奇妙な日本人が出てくることがありますが、あの感じなんです。
知識やリスペクトの欠如が露呈する瞬間です。
教師ばかりでなく、生徒ももちろん、こうした知識に触れ、尊重する必要がありますね。
それなくして、本物のバレエに近づくことは出来ませんから。
写真協力 バレエ衣装専門店Chutti