内転筋をどのようにバレエで使うか、
まだまだ誤解している人が多く存在していると、海外のサイトで紹介されています。
海外での誤解は、
このサイトで紹介されていますので、翻訳機能を使って読んでみてください(^_^)。
私自身も内転筋について、書いていますので、こちらもご参考までに。
バレエ教授法では、内転筋をどのように捉えているのか考えてみます。
まず確認したいことは、内転筋は、ターンアウトのために使う筋肉なのか、です。
早速、教科書から内転筋について探してみました。
実は、ロシアバレエメソッドの教授法をまとめた代表的な4冊の本の中に、内転筋という言葉は出てきません。
また、私が師事しているワガノワバレエ教授法全課程修了している先生は、解剖学を生徒に教える必要はない、とおっしゃっています。
人々の関心とロシアバレエメソッドとの間にギャップがあるのが分かりますね。
その上で、先の4冊の中で一番それに近い表現が出てくる個所をご紹介します。
「上に引き上げた状態を保ったまま、脚の内側の筋肉全体を前に回すようにして、付け根と膝を外に開きます。内側の筋肉を正しく使っていると、お尻の下の筋肉も同時に堅くしまります。筋肉が充分に使われていない場合、お尻の下の筋肉は柔らかいままです。」
(『ロシアバレエレッスン① 初級編 第1学年』エマ・A・ブリャーニチコワ 著 音楽之友社 18P より引用)
脚の内側 というのが、内転筋を含む内もも(からかかとまで)を指していると思うのですが、
この筋肉を収縮させるとは、書いてありませんね。
ただ、前に回す とだけ書かれています。
これって、形のことです。
内転筋(内もも)がどの方向を向いているか、という形を語っています。
脚の内側に力を入れるのではなく、どこかに力を入れた結果として脚の内側が前を向くのです。
もし、正しい形になっていない場合、お尻の下の筋肉が柔らかいままである、
という注意点も書かれています。
決してお尻全体を硬く締めるのではなく、太ももとお尻の際の部分(お尻の下)が締まります。
ターンアウトのためにお尻を締めるのは順序が逆です。
脚の内側(内転筋、内もも)を前に回し向けると、その時お尻の下(お尻と脚の境目から脚側の部分)が締まっているのです。
形が先です。
お尻にはターンアウトの筋肉、ターンインの筋肉、デリエールに引っ張る筋肉、ア・ラ・スゴンドに引っ張る筋肉の全てが混在しています。これが解剖学から分かることです。
これらの筋肉の起始停止を覚えて、ターンアウトの筋肉だけ選んで収縮させればよい、というのは解剖学的には正しい答えになります。
でも、動き回っている最中にターンアウトの筋肉だけ選んで意識的に収縮させ続けることが、ダンサーのやるべきことでしょうか?
それができるように体を鍛えさせることが、バレエ教師の役目でしょうか?
本末転倒とはこのことです。
バレエ教師が解剖学の奴隷になっています。
ここでも誤解のなきよう!
バレエの教科書には、正しい形について多くのことが書かれています。
行い方
注意事項
やってはいけないこと
音の取り方
などなど…。
この情報だけで十二分に生徒を上達させられるはずです。
もし、生徒が思ったほど上達しないとしたら、これらの情報、つまりバレエ教授法が十分生かせていない可能性があります。
まずはそこを疑いましょう。
しかし、教授法だけでは解決しません。
なぜなら、日本でバレエを習う生徒の多くは、バレエ教授法の前提条件を満たしていません。
正しく行おうとしてもそれはできない、という限界があります。
だからと言って、生徒が思ったほど上達しないとき、真っ先に
生徒の体を鍛えようとか、
柔軟性を高めようとか、
前提条件のせいにするのは安易に過ぎます。
その前に、解決の糸口がバレエ教授法の中にないのか、その可能性を探るべきです。
こんな風に言い換えることもできます。
前提条件を満たした生徒しかいないクラスで、生徒たちを十分に上達させられる指導ができるか、自分に問うてみてください。
仮にワガノワバレエアカデミーのクラスを担任することになったとしても、
つまり前提条件を満たした生徒しかいないクラスを担任することになったとしても、
すぐに指導に入れるか?
その生徒達を十分に上達させられるか?
ということです。
その準備をしていないまま指導したとすると、やはり思うように結果が出ないはずです。
そこで、指導力のなさを棚に上げ、生徒の体を変えようとしたら…
あの〜、アカデミーの生徒は、全員前提条件満たしているんですけど…
これっておかしくないですか?
まずはバレエ教授法をしっかり身につけましょう。
そこを疎かにしたまま、対策を求めるのは本末転倒です。
参考図書:『ロシアバレエレッスン① 初級編 第1学年』エマ・A・ブリャーニチコワ 著 音楽之友社