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そもそも何で「引き上げ」?

そもそも何で「引き上げ」?   その答えは、ロシア・メソッドが教えてくれます。   「踊りで体を意のままに操ることができるためのもっとも重要な前提条件を、ワガノワは、強くしっかりとした上体の姿勢と考えていた。 (中略) 本書のなかでワガノワがくりかえし強調しているのは、動きは「上体から」始めなければならないということである。なぜならば、「上体から」の踊りは、信頼できる支えとパの芸術的ニュアンスを確保してくれるからである。エポールマン〔肩と上体の向き〕に特別な注意が払われていることを証明するのが、彼女のレッスンでは、上体の状態が同じままで二つのパを続けて行うことがなかったという事実である。必要不可欠な安定性と柔軟性を生徒の体に覚え込ませたあと、彼女はあえてフェッテやランヴェルセのさまざまな形、上体の回転を基礎としたほかのさまざまな動きを練習に導入した。」 (『ワガノワのバレエ・レッスン』アグリッピナ・ワガノワ著 新書館 1996年 19pより引用)    

 

ロシア・メソッド教則本の中にも答えがあります。  

 

「正しく訓練された上体は、動きを安定(aplomb)させるための土台となります。正しい姿勢をつくるための練習は、まずバーに向かって立つことから始め、次に、バーに片手だけをおき、さらに、センターに移って行います。 正しく姿勢を立てることにより、上体が安定するだけでなく、クラシック・バレエに欠かせない足の開きや、上体のしなやかさと表情が発達します。」 (『クラシック・バレエの基礎』N.バザーロワ/V.メイ著 かるさびな出版 1992年 8pより引用)    

 

『ワガノワのバレエ・レッスン』、『クラシック・バレエの基礎』、二つの書籍いずれも   生徒が真っ先にやらなくてはいけない事を、「上体を安定させること」としています。

「上体の安定」が、様々なステップを自由自在に踊るために、必要不可欠だということです。

ここに出てくる「上体の安定」とは何か、少し探ってみましょう。

「上体の安定」のために行うこと、それは「正しい姿勢作り」ですね。

その方法は…、

「まず、バーの上に両手をおいて立ちます。このとき、肘は軽く曲げて下げます。両手は緊張させないでバーの上に、体の中心から同じようにのせます(バーに寄りかかったり、引っぱったりしないで)。両足は第Ⅰポジション、膝は強く伸ばします。両肩は緊張させないで開いて下げます。骨盤、大腿部の筋肉は、上体が真っすぐ軽く上に伸びるように、できるだけ引き上げます。 (中略) 【注意】上体を引きしめて引きあげることによって、股関節が自在に動かせるようになり、足の開きの発達が促されます。引きあげた上体を維持していることは、舞踊手にとって欠かすことのできない習慣であり、バレエ特有の訓練の一つです。」 (『クラシック・バレエの基礎』N.バザーロワ/V.メイ著 かるさびな出版 1992年 9pより引用)  

 

  「上体の安定」のために、正しい姿勢づくりがいかに重要か、ということがわかります。

そして、出てきました、「引き上げ」。

この文章から明らかなように、「引き上げ」は上体の安定のための手段。

決して目的ではありません。

上体を引き上げることにより、  

1. 上体の安定 2. 股関節の自在度 3. 足の開き  

この3つが手に入ると書かれています。  

そして、この3つがひとつ先の目的です(その先に、本物のバレエが待っています)。  

「引き上げ」は、そのための手段です。    

「引き上げ」を目的にしてしまうと、「真の3つの目的」が霞みます。  

あなたは、「引き上げ」をしようとするとき、目的が明確でしょうか?  

もし、目的が分からないまま引き上げているとしたら、「間違った引き上げ」になっているかも知れません。  

なんちゃって引き上げ…   目的を持たない、虚しい引き上げ…  

上半身を固めるように筋肉を硬直させる、あの間違った力の入れ方です。    

どんなことにも共通するお話ですが、   目的と手段を履き違えると、   狙った効果は期待できません。    

「引き上げ」は何のために行うのか?  

「引き上げ」が目的になっていないか?  

いま一度、自問自答してみることをお勧めします。    

 

    参考図書       

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