私が大好きなバレエ教師がいました。
大人になって受けたオープンクラスの先生です。
知的で、デモンストレーションも的確でした。
ただ、一点。
私が後になって気づいたことがあります。
当時の私は、解剖学的アプローチを提唱し、
クラシックレッスンを教えていました。
筋肉の名称などは生徒さんには通じにくいので、
解剖学的に理にかなったポジションを推奨していました。
先に述べた先生の何がすごいか?
それは、解剖学的な知識が半端じゃなかったのです。
私の知らない筋肉の名前がスラスラ出てきます。
自宅に帰って、解剖学書を開いてはチェックしたものです。
その時は、なんの疑問も抱きませんでした。
自分がやっていることに。
しかし、
ロシアバレエの教授法を本格的に研究し始めて、
疑問が湧いてきました。
ロシアバレエメソッドの教科書には、
筋肉の名前が出てこないのです。
・動かし方の説明
・音の取り方
・そのステップでの課題
が、書かれているだけ。
「どうしてだろう?
解剖学的な知識は必要ないの?」
教授法の講義を受けるようになって、その疑問が晴れました。
教師が教えるべきは、
筋肉の名前や作用じゃなくて、
正しい形。
それがメインの仕事。
私が教授法を師事している先生は、
「解剖学の知識は生徒に混乱を与える。
そもそも、筋肉の場所や名前がわかったって
正しく使えなきゃ意味がないでしょう?
正しい形を教えれば、正しい筋肉が使われるのだから、
筋肉の名前や場所の情報は不要です。」
と。
腑に落ちました。
教師のすべきことは、
「生徒に正しい形を教えること」
これだけです。
ただし、
「正しい形を教えても上手にならない!」
という生徒も出てきます。
そういう生徒は、何が足りないのか?
それについては次回お伝えします。