
生徒さんからのご質問、うれしいですね。
「先生、バレエ雑誌で読んだのですが、腕のア・ラ・スゴンドでは肩甲骨を外に開いて背中を横に長く使うとなっています。本当のところはどうなんでしょう?」
まずは、書籍から引用してみます。
元モスクワ・バレエ・アカデミー教師でいらした中川三千代先生の書籍から。
「肩甲骨で背骨をはさむように縮めます。すると肩先の骨がスーッと開き、鎖骨がきれいに伸びます。鎖骨の伸びを指先まで維持して肩甲骨から中指の先までを流れるようにア・ラ・セゴンドまで開いていきます。」
(『バレエダンサーをめざす人へ』 中川三千代著 健康ジャーナル社 2008年23〜24p より引用)
どうやら「背中を横に開く」ことはしません。
むしろ逆です。
後ろの背中側は短く形つくり、前の鎖骨側は開く。
別の角度から考えてみます。
デュエットで、女性のア・ラ・スゴンドの腕を男性が横方向に引っ張った場合を想像してみて下さい。
後ろの背中が開いて長くなっている場合、間違いなく男性によって上体が崩れます。
上体を支える筋力が不足するからです。
なぜこんなことになるかというと、背骨を支える力をどこからも借りてくることができなくなるからです。
反対に、背中側でなく、鎖骨側で開くとどうなるでしょう?
鎖骨が開くと、その対面にある肩甲骨は縮みます。
肩甲骨で背骨を挟むように縮めると、背骨のラインが安定し、結果的に上体が安定します。
このように作られた上体ですと、安定を失うことなく男性の引っ張りに対応できます。
どうでしょうか?
背中を開いてア・ラ・スゴンドを作っては行けない理由がおわかりになったでしょうか?
上体の安定なしに、自由な腕の運びは行なえません。
そこをしっかりと理解することが大事ですね。
ぜひ両方の力の入れ方を試して上体の安定性を比較してみてください。
本に書かれていたから正しいとか、このブログに書かれていたから正しいとか鵜呑みにせず、ご自身で確認してご自分で納得の行く答えを持つようになさってみてください。
ということで、今回のご質問への回答は、
「背中は開きません。肩甲骨で背骨を挟むように斜め下に向かって寄せて下さい(斜め下に寄せると、肩が下がり、鎖骨が開きます)。」
と、なります。
参考図書
『バレエダンサーをめざす人へ』 中川三千代著 健康ジャーナル社