
何かを成し遂げるには、「好き」という気持が大事。
ですが、「好き」だけではどうにもならないということもあります。
著名人のインタビュー記事などで、
「人工知能で世の中が激変するこの時代、何か特別に好きなことを極めていくことが大事」
という趣旨の言葉をよく目にするようになってきました。
確かに「好き」は大事だけれども、それだけではない…。
と、感じるのは私だけでしょうか?
例えば、クラシック・バレエ。
ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーでは、身体条件・身体能力・音楽性などの厳しい審査を通過した者のみが入学を許可されます。
入学後も、厳しいレッスンで優秀な成績を収めないと退学になります。
そして、8年間の学校生活を経て、その一部の生徒がバレエ団に入団します。
彼らは、「好き」を極めたからバレリーナになれたのでしょうか?
最近、プロバレリーナを目指す生徒たちに質問をしてみました。
「バレエがきらいで、身体条件と能力が高い生徒はバレリーナになれるでしょうか?」
生徒全員の答えが
「なれない」
でした。
続けての質問は、
「バレエが好きで身体条件・能力が低い生徒はバレリーナになれるでしょうか?」
答えは、
「なれる」
でした。
この答えを聞き私は、
「まずい」と思いました。
私の考えを下記の図にまとめています。
◎ の生徒は、すごく上達しそうです。
◯ の生徒は、◎の生徒よりは上達のスピードが遅いでしょう。ですが、身体条件と能力が高いのならば問題なくバレリーナになれるでしょう。
問題は、☓ のバレエが好きなのにバレエ的な身体条件・能力を持ち合わせていない生徒。
☓ の生徒が △ や ◯ になるためにはどうすればよいか…。
バレエが好きなら、バレリーナになれると思ってしまった生徒たち。
まだ小学生の彼らには、現実を見る目が養われていないのかもしれません。
世の中が、子どもたちに現実を見せないような仕組みになっているのではないかと勘ぐるくらい現実離れした価値観を持っている子どもたち。
プロへの道は遠いとしみじみ思っていまいました。
「23歳までにものにならなかったら、将来のことを真剣に考えなくてはなりません。教育畑へ移ったり、結婚をしたり、第二の専門を身につけたりするケースが多いですね。バレエダンサーは、活動期間がたいへん短く、38歳で年金生活に入ります」
「バレエが好きなロシアの子供たち」(ロシアNOW、2014年12月24日、ロシア連邦政府発行)でナタリヤ・モストヴァヤさん (ロシア私立バレエ学校「リバンベル」校長)が述べられています。
タイトルの「好きこそ物の上手なれ」。
好きであることは大事だけれども、必要不可欠ではなさそうです。
まずは、その職業に適した条件を備えているか、この部分が必要不可欠なのです。
その条件を有していて、さらにその職業が好きなら申し分ないということです。
この価値観を昨今の日本の子供たちに理解させるのは難しい。
なにせ、そういうことを考えなくても生きていけるぬるま湯な世の中ですから。
ですが、そうこうしているうちに子どもたちが立ち直れないくらい現実に打ちのめされてしまうのではないかと、危惧するのです。
このようなブログを通して、バレエについて本音で語ることしかできないでしょうか。
悶々とします。
問題の生徒の救済策はないものだろうか?
☓ の生徒が △ になる方法はないだろうか。
悪条件を少しでもよくする方法はないだろうか。
バレエに詳しい整体師やトレーナーさんに出会えれば、条件を良くすることは可能です。
骨の形状は変えられませんが、使い方や修正能力は高まるはずですから。
変化には、大変長い時間を要することは必至です。
その間めげずに、自分の決めた道を貫けるかどうかにかかってきます。
最後まで諦めずにやり抜く力が必要です。
「強い意思」
ぬるま湯な現代にそれを求めるのは酷かもしれませんが、それしか方法がないのです。
「条件を良くするために出来ることはすべてやる」
これだけです。
「好きこそ物の上手なれ」
は、バレエにおいてはニュアンスが違います。
「やり抜けることこそ物の上手なれ」
ではないでしょうか。
「好き」という感情に流されて現実逃避してきた結果、条件が改善されず「下手の横好き」に気付かされバレエを辞める。
そのようなことのないように、解決策へ向かっていけたら、バレエを続けることの大切さを学べるでしょう。
やり抜く力
が、カギです。