
「ポドフヴァート」
このバレエ用語、聞いたことがあるでしょうか?
「すくい上げる手の動き」という意味です。
これは、準備のポジションを通らずに、手を軽く下に下ろしてすぐにすくい上げてくるようにします。ただ第1ポジションに丸めていくのではなく、丁寧に素早くすくうように上げることが大切です。
(『ロシアバレエレッスン①初級編 第1学年』 エマ・A・ブリャーニチコワ著 音楽之友社発行 49pより引用)※
ロシア語では、「ポドフヴァート」。
あなたのレッスンではどう呼んでいるでしょうか?
ロシア語では、
подхват
と書きます。
上から落ちてくるものを下からすくい上げるという意味だそうです。(ロシア語通訳の方に聞いたので確かな情報です)
ネットで調べていたら、柔道の掬投(すくい投げ)にもこのポドフヴァートが使われています。
柔道とバレエで同じ用語が使われているのは面白いですね。
他のメソッドではどう呼んでいるのか、そもそもこの動きがあるのか分かりませんが、
おそらくロシア・メソッド特有の動かし方ではないかと思います。
通常、バレエではフランス語の用語が使われますが、このポドフヴァートはロシア語なので。
さてこの「ポドフヴァート」、一体どのような動きでしょうか?
ワガノワ・バレエ・アカデミー2年生のポアント・ワーク、アッサブレ・スートゥニュでの手の動きをご覧ください。
手の使い方、すくい上げていますね。
丁寧にすくい上げている子もいれば、少し雑にすくい上げている子もいます。
ですが、すくい上げています。
これが「ポドフヴァート」。
ロシア語でバレエを習うと、
ロシアでしか使われていない用語に出会うことになります。
そしてそれは日本語では翻訳しきれないものも存在します。
今回の「ポドフヴァート」は、「すくい上げる動き」と翻訳できます。さほど難しくない表現です。
ただし、翻訳できてもニュアンスが違ってくることもあるでしょうし、そもそも日本語にその概念がないこともあるので、注意が必要です。
そのすき間を埋めるために日本で猛勉強、は、なかなか難しいですね。
そもそもすき間の存在に気づいていなければ、努力が空回りします。
何かを学ぶ時、その本場で学んだほうが良い理由がここにあります。
ニュアンスの違いは、歴史や文化、所作、生活様式と言った非言語的なコミュニケーションを通して伝承されていくものです。
どれも肌で感じないと身につけることは難しいものです。
ネットでは伝わりにくいのです。
そのニュアンスの有無がホンモノとニセモノを分かちます。
バレエを学ぶのならぜひ本場で学んでほしい。
バレエを学ぶ子どもたちへの期待です。
そして、周りの大人達は、その環境を作ることに尽力してほしい。
これは必然的に、海外へのバレエ留学となります。
それが難しい場合は、日本でホンモノの指導を受けられる環境を作る必要があります。
教室選び、言語、生活習慣、躾、文化、価値観。
やるべきことはたくさんあります。
そして、そのどれもがホンモノである必要があります。
世の中にはホンモノだと信じてニセモノを提供する人がいます。
ネットだとそれが簡単にできてしまう。
善意から行っている場合もあるので見抜くのは容易ではありません。
つまるところ、ホンモノを見抜けるかどうかは、情報を受け取る人の感受性にかかっているということになります。
さて、このポドフヴァート、ピルエットですごい威力を発揮します。
そのお話はまたの機会に。。。
※ 参考文献