ニコライ・ツィスカリーゼ校長による公開レッスン(7/19, @新国立劇場)に続いて
ワガノワ・バレエ・アカデミー教師による特別レッスン(7/20, @ノアスタジオ) を見学してきました。
やはり、ロシア・メソッド教授法。
教師が違っても指導ポイントは同じです。
今回の教師は、ユーリャ・カセンコーワ先生。
ワガノワで上級クラスを担当なさっています。
ツィスカリーゼ校長の指導ポイントは、下記の4つでした。
- 腕は上体の前
- 肩甲骨を保つ
- プリエで床を押す
- 脚の付け根を軽やかに使う
※私の解説はこちら
カセンコーワ先生の指導ポイントは、下記の4つです。
- 腕を正しいポジションに置く
- 背中を強く保つ
- グラン・プリエでアキレス腱を伸ばす
- ポーズは頭と目線で作る
ツィスカリーゼ校長と1から3まで同じです。
校長のレッスンは、動けるダンサーを対象にしていました。
カセンコーワ先生は、小中学生を対象にしていたので、指導のレベルが違います。
その違いが4番目に現れています。
1〜3は、どちらにも共通する基礎なので同じでした。
まずは基礎のポイントから解説します。
1.腕を正しいポジションに置く
1番ポジションは中指でおへそを指す位置。
教科書では手がみぞおちの前となっています。
中指がここ!という指導は新鮮でした。
2.背中を強く保つ
ジャンプのときに上体がグニャグニャになってしまう、と。
ツィスカリーゼ校長はピルエットの時に、と指導していました。
ジャンプもピルエットもどちらもテクニックの領域。
どちらも背中が大事。
3.グラン・プリエでアキレス腱を伸ばす
ツィスカリーゼ校長はかかとで床を押す、と指導していました。
かかとで床を押すためには長いアキレス腱が必要になります。
「グラン・プリエの下から戻るときは、上体を上げることよりも先にかかとを床につけようとしなくてはならない」
と、カセンコーワ先生は指導していました。
かかとを床に下ろすにはアキレス腱を長く使う必要がありますね。
4.ポーズは頭と目線で作る
ポール・ドゥ・ブラで、目線で指先を追いかけない生徒がほとんどでした。
おそらく、そのことを習っていないのだと思います。
エファッセやクロワゼのポーズを作るときも、腕の動きと全く関係なしに常に正面を見ようとする生徒に、
そうではない、とポーズの重要性を説いていました。
対象年齢がどうであろうが、レベルがどうであろうが、
基本となる指導ポイントはいつも同じ。
スッキリしています。
そして、指導する言葉がけも同じです。
どの教師が指導しても同じような内容になります。
ここにロシア・メソッドの強さが生まれるのだと改めて思いました。
ところで
ここからは少し愚痴モードです。
それにしても、ワガノワ・バレエ・アカデミーの教師のレッスンを受けるのなら、
ロシア・メソッドの動かし方の基本知識くらいは頭に入れてくるのが普通だと思うのですが、どうなんでしょう?
ロシア・メソッドでは、ロン・ドゥ・ジャンブ・パル・テールは1番からはじめます。
ファーストサイドで5番から始めて注意されたら、セカンドサイドでは同じ過ちを繰り返さないようにするべきですよね。
なのに、ほぼ全員セカンドサイドも5番から始める有り様。
基礎知識として1番から始めるということを知らないのは、普段習っているメソッドの違いによるのかも知れないし、このことを知らない教師に教わっているからかも知れない。
そういう意味では、生徒の責任とは言い切れません。
でも、セカンドサイドでもいつものレッスンのように行ってしまうのは、如何なものでしょう?
「学ぶ構え」が出来ていない。
忘れてしまうのか、応用しようとする意志がないのか。
漫然といつもの動きを繰り返しているだけでは学びにはなりません。
これが何度となく繰り返されるので、
カセンコーワ先生は、
「考えて!」
と何回も指導していました。
その真意がどれ程伝わったか、甚だ疑問が残るところでした。
お金を払ってセミナーを受けるのなら、そのセミナーでの指導を最大限自分のものにするべく、
- 「学ぶ構え」を作り
- 基礎知識を入れてから臨むべきです。
後者は多分に教師の責任です。
メソッドが違うセミナーにいきなり送り込んでは、生徒が混乱するだけです。
生徒を成長させたくてセミナーに参加させているのでしょうから、生徒にとって、何が大事なのか、教師が率先して考えてあげたら良いのに、と思いました。
カセンコーワ先生の、
「考えて!」
は日本のバレエ教師にも向けて発せられている、と感じました。