
ロシアメソッドでは、脚2番の幅が明確に決まっています。
足一つ分です。
足の大きさが24cmなら脚2番の幅は24cmということになります。
グラン・プリエでもこの幅のまま行います。
もっと広くしたい?
広くしてはいけない理由があるのです。
グラン・プリエの2番の両足の幅はメソッドによってばらつきがあります。
辞書で調べてみましょう。
ドゥージェーム・ポジシオン
ドゥージェームは「第二の」の意。両爪先と両膝を真横に向け、両踵は一足分の間隔を置く。但し英国(RAD)及びリファール派では両踵の間隔を一足半としている。
〜『バレエ用語辞典』4pより、川路 明編著 東京堂出版発行
ロシアは一足、イギリスは一足半の間隔。
ここでは、私がディプロマを頂いたロシアメソッドの行い方の注意点をワガノワ先生から教わりましょう。
ドゥミ・プリエと同様、グラン・プリエのときにも、両膝を執拗に開くこと、すなわち、両脚を完全にアン・ドゥオールに開くことがきわめて大切である。なおこのとき、膝から腰までの脚の上部にとくに注意しなければならない。膝は常に爪先の方向に向かって曲げられる。
(中略)
第2ポジションでプリエを行うときには、両踵は床から上がらない。このポジションでは両踵を床から離さないで、深く屈むことができるからである。両足は足一つの距離をおいて開いている。このように両脚をわずかしか離さないことは、脚の柔軟性を発達させるためにもっとも有益である。しかしこのプリエの際に、けっして臀部をつき出してはいけない。臀部をつき出すと、動きの正しいフォームがくずれ、このプリエによってえられるはずの腰の充分なアン・ドゥオールが作り上げられないのである。
〜『ワガノワのバレエ・レッスン』 42,43p アグリッピナ・ワガノワ著 新書館
太ももと骨盤の保ち方に特に注意するようにという指示があります。
着目する部分が腰回りです。
ロシアメソッドでは、足先よりも太ももから骨盤にかけての指導が多くあります。
なぜなら、動きの中枢を腰回りと捉えるからです。
移動は上体から、という考え方と一致しています。
中枢の動きがスムーズなら末端もスムーズになる、という考え方(法則)です。
私も指導では太ももと骨盤について多く話します。膝から上の部分の指導がほとんどです。
膝から下についてはほとんど指導しません。
もちろん、明らかにラインが崩れていたら膝から下について指導しますが、膝から下に問題があるのは膝上の部分に問題があるからと捉えるので、細かい指導にはなりません。
2番を広くしては行けない理由=ロシアメソッドで2番の幅が足一つ分なのは、
太ももと股関節でアン・ドゥオールさせるのが目的だから、です。
ドゥミ・プリエを通過してからの膝を外に向けていくプロセスを学んでいきます。
膝が外に向かって行く感覚なしにバレエを学ぶことは難しいです。
両踵の間隔が広いと、膝を外に向けていく感覚を得ることは難しくなります。
できたら、太ももが床と水平になるくらいまでは膝を外に持っていきたいところです。
アキレス腱が短くて、足首が固くて、という悩みをお持ちの方も多いでしょう。
最初はドゥミ・プリエを多く超えていくことができなくても徐々に慣らすように訓練する必要があります。
でも、これは子どもへの指導の場合。
大人リーナには、
「2番で、かかと浮かしていいですよ」
と、指導します。
なぜなら、可動域を今から広げるのは難しいから。
でも2番プリエの目的は達成しないといけません。
2番プリエの目的は、
「太ももと股関節をアン・ドゥオールさせること」
でしたね。
だから上の部分の方が大事。
もちろん下の部分であるかかとを床から浮かさないってことも大事ですが、そこに着目して本来の目的が達成されなければ本末転倒。
実は、このかかとを浮かしてまでもプリエを深めていく行い方は、
ワガノワ・バレエ・アカデミーの先生が日本人留学生に行っていた指導です。
その留学生、アキレス腱が短かったんですね。
10年以上も前に見学した際にその指導をされていました。
当時はなんでそんなことさせるのか理解できませんでしたが、今なら理解できます。
もちろん、かかとを上げることに否定的なワガノワの先生もいらっしゃいます。
かかとを上げるほどにアキレス腱が短いだなんて考えたことすらないはずですから(泣)。
アキレス腱の短い子はそもそもワガノワ・バレエ・アカデミーに入学できません。
そういう意味では、日本人留学生のためにかかとを浮かしても良いというアイデアを編み出した(?)先生には脱帽です。
また、プリエには二つの動きの性質があるということも着目しなくてはいけない部分です。
一つは上下のプリエ、
もう一つは移動するプリエ。
この移動するプリエのときに太ももが正しい位置に置かれているのが理想です。
この移動のプリエのためにも、太ももと骨盤を正しく保つ必要があるのです。
どのメソッドにも優先順位というものがあります。
足一つ分の2番でかかとを上げないのがロシアメソッドの行い方。
その目的は、かかとが床から離れるか離れないかということよりも(もちろんそれも大事ですが)、太ももと股関節の訓練のためだったんです。
末端の形に囚われすぎると見えないことがあります。
そしてその見えてないものの方が大事だったりするのです。
見えたものが正しい。
そして、その見えたものを目指すのが正しい指導、と考えるのは短絡思考です。
繰り返しますが、本質は見えてないところにあります。
それでもどうしてもかかとを上げたくないから広い2番でグラン・プリエをしたいという人もいるかも知れませんね。
そういう方はどうぞ広い2番で行ってください。
ただし、ロシアバレエメソッド的には使えない太ももと股関節になってしまいます。
どちらをチョイスするかは本人次第ですが、ロシアバレエメソッド的には上記が答えです。
ところで、イギリスメソッドではなぜ一足半なのでしょう?
ここでの優先は何か、興味があります。
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