日本国内で、毎週のようにバレエコンクールが開催されています。
審査員が何を見ているか、とても気になりますよね。
日本ではバレエ教授法を学んでいる教師が15%しかいませんので、日本人審査員が何を基準にしているか想像できません。
ですが、私が見てきたものはお伝えすることができます。
それは、
ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーのツィスカリーゼ校長の審査基準です。
2018年12月21日ワガノワ5年生の前期末テストを見学させていただきました。
私の前には、ツィスカリーゼ校長、アユポワ芸術監督が審査員として座っています。
テストが始まる前に、審査員全員に生徒の配置図が紙で配られます。
バー、センターでの配置図が書かれていて、余白にコメントが書けるようになっています。
さぁ、テスト開始!
私は生徒の動きも気になりましたが、審査員が何を審査しているか、そちらもすごく気になりました。
ツィスカリーゼ校長は、テスト開始後5分で、審査を終了してしまいます。はやっ!
その5分で配置表に点数を書き込んでました。
その後はスマホを見たり(笑)、アユポワ芸術監督と何かお話しています。
ツィスカリーゼ校長は5分で一体何を審査したのでしょう?
それは、
プリエとタンデュ。
この二つの動作はバレエの基本動作です。
二つの基本動作の質を見れば、そのダンサーの実力がわかります。
なので、5分で審査終了。
その後ちらちらとチェックする部分もありました。
それは回転と基本ジャンプです。
これはテクニックの部分です。こちらもチェックしていました。
バーでのプリエとタンデュ
センターでの回転
アレグロでの基本的なジャンプ
上記の動きのみチェックしていました。
あとは、アユポワとお話(笑)。
5年生前期末テストでは、センターでの大きなアダージオはありませんでした。
5年生全員が同じコンビネーションで審査されていました。
教授法最高責任者であるグリバーノヴァ先生がコンビネーションを作られたのですが、全員が同じ条件で審査されるようにと、テスト前3日間で振り覚えをさせたそうです。
3日間という短い期間での振り覚えだったせいでしょうか、大きなアダージオは入っていませんでした。
ワガノワ・バレエ・アカデミーの審査基準は基礎でした。
プリエとタンデュ。
この二つの動作を丁寧に行えるダンサーが日本にどれだけいるか…。
日本ではテクニックばかりに目が行って、基礎を疎かにする傾向があります。
そして、派手なテクニックで踊ったほうがコンクールで上位になれるという異様な慣習もあります。
世界トップレベルのワガノワ・バレエ・アカデミーは、基礎を重視しています。
正しい基礎の上にテクニック、が順序です。
その逆はありません。
ロシアバレエメソッドでは、学年ごとに課題が明確です。
その学年での課題を疎かにすると、後々ステップをこなすことができなくなるからです。
そして疎かにしていた子は退学させられます。
真面目に取り組んだ子のみが生き残るというシステムです。
日本のバレエ教育の現場でこのシステムを採用しているところは皆無だと思います。
だからと言って、好き勝手やっていいということにはなりませんね。
長期的なスパンで物事を考えられる素質が必要です。
目先のテクニックではなく、長期的には基礎を重視すべき、という価値観です。
日本ではまだまだ難しいことかもしれません。
少なくともバレエ教授法を学べば、長期的スパンのものさしが出来上がります。
学校と比べるとわかりやすいかもしれません。
小学校、中学校、高校、大学校
と、進むシステム。
小学校のあと、いきなり大学の授業を受けても理解はできません。
本人が理解していると思ってもそれはまず間違いなく現状認識が間違っています。
日本のバレエ教育の現場では、この理解なしの飛び級をさせているスタジオが少なからず存在するようです(多くないと願いたい)。
理解なしの飛び級は子どもの将来を潰します。怪我を誘発させたり、挫折に導いたり。
また、頭で理解できても身体的に準備が間に合っていない場合もあります。
バレエ教授法を学んだことのない教師がはたしてこれらを見極めることが出来るのでしょうか?
出来るわけないですね。その方法論であるバレエ教授法を学んでいないのですから。
飛び級させている時点でアウトです。
やはりシステムなしの教育はいいことがありません。それなのに日本にはそれがありません。
あなたの教室は大丈夫でしょうか?
自衛のためにもバレエ教師のバックグランドに目を向けることを強くお勧めいたします。
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