ロシア・バレエ・メソッド
この言葉を耳にして最初に受ける印象は何でしょうか?
もしかすると、
- 古い
- 堅苦しい
- 重々しい
かもしれません。
意外と知られていないようですが、
ロシア・バレエ・メソッドは発展し続けています。
晩年の論文の中で彼女は書いているー
「長いあいだ 私に会わなかった生徒たちは、私の教える内容が進歩発展していると言う。
なぜか? それは、新しい手法の作品にじっと注意を向けているためである。
なぜなら、私たちをとり巻く生活、ありとあらゆるものは、成長し、前進しているのであるから。それゆえに、私は皆さんにお勧める・・・・・・生活を、芸術を、じっと観察しなさいと」
この貴重な遺言をワガノワは自分の後継者たちに残してくれたのである。
今日、ワガノワの教育メソッドは、わが国の全バレエ学校の主要で基本的なメソッドとなっている。このメソッドは国中のさまざまなバレエ学校で働くワガノワの後継者たちによって、さらに発展させられている。
(『ワガノワのバレエ・レッスン』アグリッピナ・ワガノワ著 新書館発行 21pより)
※冒頭の「彼女」はワガノワ先生のことを指しています。
ワガノワ先生がメソッドを構築した頃と、今とでは様変わりして見えるのは確かでしょう。
しかし、土台は同じでまったく変わっていません。
例えば住宅のリフォームで考えてみるとわかりやすいかもしれません。
土台、骨組みに当たるのはメソッドの基盤となる考え方です。
改築、内装の模様替えなどがメソッドを発展させている部分となります。
時代とともに、見た目は様変わりしていくことでしょう。
でも、土台、骨組みは変わりません。
土台も骨組みも変わるとしたら、それはもう本来のメソッドではなく、別物になってしまいます。家の建て替えです。
建て替えでは一旦家を取り壊します。これはメソッドを壊すということになります。
ワガノワ先生は土台と骨組みを作ってくださいました。
そして後継者に伝授してくださいました。
後継者の使命は土台の上でメソッドを発展させていくことです。
実際にワガノワ・バレエ・アカデミーでは数年おきに教授法の改定を行っています。
私が知る限りでは、1997, 2011, 2017年と改定されています。
それ以前もあると思いますが、資料が手元にありませんので、確かなことはわかりません。
今のワガノワ・バレエ・アカデミーでは2017年度版で指導されています。
20年の間に3回、の改定です。
いま初めて知ったという方は、こんなに頻繁に改定されている事実に驚くかも知れませんね。
でも、一般には知られていません。
だから、
- 古い
- 堅苦しい
というイメージを持たれるのかもしれません。
また、冒頭で引用した本は、ワガノワ先生が1934年に初版を出されてから、毎回がらりと内容が刷新されながら三回改定されたそうです。
1951年に亡くなられたときには第四版の執筆中だったとか。
17年間で四版とすると約4年ごとに改定していたことになります。
これだけでもかなりのハイペースではないでしょうか?
この「改定し続ける」というのがロシア・バレエ・メソッドの真骨頂です。
一方、
「伝統に忠実に」
と言いながら、何十年も同じ指導内容の教師もいると聞きます。
それこそ「伝統に不忠実」なのに。
ワガノワ先生がそうであったように、改定に合わせて指導内容をガラッと新しくしていたら、「古い」とは言われないと思うのは私だけでしょうか?
これだけではありません。
ワガノワ・バレエ・アカデミーでは、様々な学術会議が定期的に開催されています。
「バレエと◯◯」
テーマは多岐にわたり、未来を見据えたテーマとバレエとの関係性について数々の論文発表がされます。
私の論文が発表されたこともあります←自慢しています(笑)
昨年、コロナで流れてしまった会議では、イカ足問題についての論文が正式に採択されています。
日本にいるバレエ教師のうち、何人がイカ足問題の深刻さに気づいているのか分かりませんが、ワガノワ・バレエ・アカデミーではすでに昨年の会議で正式に論文採択し、同校の8年生の主席の生徒やマリインスキー・バレエの団員に履かせようとまでしてくださいました(すべてコロナで流れてしまいましたが。涙)。
ロシア・バレエ・メソッドが古いという価値観は、おそらくこういった積極的な改定をしていない「伝統に不忠実な教師」に対するものです。
なので、メソッド自体はもしかすると最先端かもしれません。
だから、日本人のバレエ教師が
「ワガノワで教えている」
と言ったら、何年の版を指しているのかぜひ聞いてみてください。
2017年版、と答えたら最新版です。
答えられなかったら、偽物と見てまず間違い無いでしょう。
「ワガノワ」と言いつつ、その中身は自己流だったりすると
一般にはこれを詐欺と言うはずです。
これも偽物。
ロシアなら犯罪者です。
ワガノワ本校では、毎年のように多岐にわたるテーマで学術会議が開催されても、メソッド自体に揺るぎはありません。
そこを考えてほしいです。
教授法自体が完成度の高いシステムになっているから揺らがないのです。
ただし、システムのないバレエ・メソッドもあるので紛らわしいです。
大人の生徒さんにはそういった違いを見抜ける力が必要です。
バレエ教師が土台と骨組みのしっかりしたメソッドで生徒さんを指導しているか、是非チェックなさってみてください。
「伝統に不忠実」に10年前、20年前と同じレッスンをしていないかチェックなさってみてください。
飾り付けの部分ばかりに目が行く教師だったら、土台がないということです。
教師のためのバレエ◯◯学講座
バレエ教師のための◯◯学セミナー
などはすべて飾り付けです。
それらの知識をどこまで増やしてもシステムが身につくことはありません。
身につかないから生徒を上達させられない。
上達させられないからさらに装飾を増やす。
その繰り返しが肩書に現れます。
ここも生徒さんにできるチェックポイントの一つです。
バレエを学ぶ大人の生徒さんは、バレエ教師を選ぶ際に、装飾だらけか、土台がしっかりしているか、ここを判断材料になさるといいと思います。
ダンサーとしての実績は輝かしいものですが、指導者としての専門教育の有無とは関係ありません。
教え子にコンクールの入賞者がずらりと並んでいるのも輝かしいですが、沢山の生徒を集めてひたすら自主練させて何年かにひとりか二人、コンクールで賞を獲っているだけかも知れません。
その受賞歴を見てまた沢山の生徒が集まり。。。の繰り返しに過ぎないかも知れないということです。
ぜひぜひ、バレエ教師の経歴や活動内容をしっかり見ていただきたいのですが、生徒さんの側でそれをするのは容易ではないと思います。
そこで、バレエ教師を吟味する判断材料としてこちらのページをご紹介します。
こちらを読んで頂くと、日本では限りなく100パーセントに近いバレエ教師がアウトになると思います。←私も含め(泣)
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