ワガノワ先生にとっての解剖学から思うこと

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ワガノワ・メソッドを確立したアグリッピナ・ワガノワは、
解剖学について興味深い見解を示しています。
彼女の言葉を引用すると…
 

「私は、身体の部分、脚や腕を表示するため、また身体の方向や面を表示するために、解剖学やビオメハニカから、大変簡潔で都合のよい正確な術語を借用するべきかどうかについて、長いあいだ迷っていた。結局この考えを棄てたのであるが、それはこれらの呼び名が、舞踊界ではほとんど使われていないことを考えたからである。腰、頸、肩、前腕、正面等々をいくら定義しようとしても、解剖学的な意味になってしまう。そうすると、読者が私の言うことを正しく理解し、これらの言葉に、日常的な、あるいは、自分勝手な意味を与えないとは、まったく確信できないのである。」
(『ワガノワのバレエ・レッスン』 アグリッピナ・ワガノワ著 新書館 26ページより引用)
 
※ビオメハニカ
生物力学的演劇法,人体力学的演劇法ともいう。ソ連の演出家 V.E.メイエルホリドが 1920年代に創案した演技体系。メイエルホリド自身も創立に参加したモスクワ芸術座の演劇が,心理描写や言葉に重点を置く写実主義に偏していたのを批判し,俳優の肉体の律動性を強調するダイナミックな動きで強烈な舞台表現を目指した。
(コトバンク参照)
 
 
ワガノワ自身の言葉から、
解剖学的な用語の使用が、誤解をまねくと考えていた様子が見て取れます。
 
はたして解剖学的な用語の使用は、受け取る側にとってどのような影響をおよぼすのでしょうか?
 
私は、いち早く日本で「解剖学的アプローチのバレエ」を提唱してきました。
解剖学的に理にかなった、骨や関節に無理のないポジションの提唱や動かし方を沢山の方たちに指導してきました。
 
最初は、何の疑問も持たなかったのですが、指導しているうちに
 
「これは違うぞ」
 
と、思うことが出てくるのです。
 
それは何かと言うと、
ポジションを身体に無理のない範囲に収めると、
舞台に対して方向が定まらないのです。
 
これは大問題です。

舞台の方向を優先させると、
「脚をターンインにしないといけない」

ターンアウトを優先させると、
「舞台の方向が定まらない」

これは由々しき問題です。
で、気づきました。
 
解剖学的アプローチではダメだな…と。
 
舞台の方向ありきのバレエで、方向を無視することは出来ません。
ターンアウトしないとありとあらゆる動きをこなすことが出来ない中、ターンアウトをおろそかにすることは出来ません。
 
この両者を可能にするには、
それに合った体作りを取り入れるしかない。
 
だから、当スタジオでは
バレエマスターのクラスを毎週のように開催しているわけです。
バレエ向きな体作り、そしてクラシック。
このタッグは、最強です。
 
さて、
解剖学的な表現についてですが、
私は今現在は一切していません。
 
クラシックでは、動かし方と動きの性質を教えるので、
 
「今、この動きをするために●●筋を使って、●●骨をこの位置にします」
 
とは、言いません。
 
バレエ教授法に則った指導では、解剖学の出番はないのです。
それを使えば使うほど、バレエ教授法から離れてしまうのです。
 
だから、「正しい動かし方」の提示しかしません。
 
ワガノワ先生も同じだったと思います。
最初に挙げたワガノワ先生の言葉からそれを察することが出来るのではないでしょうか?
 
バレエそのものを
より正しく、
より詳しく、
より深く理解することが最優先です。
 
そこが不十分だから、
十分な指導力が発揮できず、
解決策を他に求めたということはないでしょうか?
 
教えをバレエからスタートし、
解剖学を経て、
再びバレエに戻って来た私に言えることは、
 
バレエを学ぶなら、
バレエに詳しくなったほうが、
バレエは上手になります。
 
そしてそれは王道であるし、近道でもあるのです。
 
解剖学に出会う前に、
もっとバレエについて知っていれば…
 
と思うことがあります。
 
上達する生徒が増えるし、
怪我をする生徒も減るはずです。
 
バレエの原理原則が体系化された、
バレエ教授法を知っていれば、
解剖学的なアプローチは、
絶対にしなかったと思います。
 
日本のバレエ界に、
バレエ教授法が普及することを、
願わずにはいられません。
 
 
 
参考図書

 
 
 
 
 

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