
ワガノワの教授法で上級クラスのレッスンを学ぶと、
さまざまな大きなジャンプをどのように習得していけばよいかということがわかります。
これを10代の時に学んでいたかった…。
私がバレリーナへの道を諦めたのは、怪我が原因です。
15、6歳ぐらいの時でしょうか、発表会の練習で、
カブリオールの着地に失敗し、膝を捻ってしまったのです。
一度捻った膝は再発するもので、その後何度となく捻っています。
そして、捻ったせいで、膝の強度が失われ、まともにジャンプすることさえもできなくなってしまいました。
気が付くと、プロへの道を諦めざるを得ない状況でした。
その後もレッスンを続けてはいたのですが、
どうしてこんなことになったのだろうか?
いつも頭の何処かで、この疑問がつきまとっていました。
何年かして、「解剖学的アプローチのバレエ」が日本に上陸。
講師のヤン・ヌイッツ先生の講義を受けに札幌まで何度か足を運びました。
その後、
解剖学的アプローチのバレエ教室という名目でバレエスタジオを立ち上げ主宰してきました。
解剖学の知識にもふんだんに触れ、生徒さんが怪我をしないようにするにはどうすればいいのか日々研究してきました。
でも、何年かこのような解剖学的な指導をして来て、またまた疑問が頭をもたげて来たのです。
「これって、動かしやすいけど、バレエじゃないな…」
解剖学的なアプローチだと、どうしても方向が決まらないのです。
バレエの8つの方向に対して脚が出ないのです。
方向がありき!のバレエでこれはまずい。
紆余曲折しながらたどり着いたのが、ワガノワメソッドです。
動かし方、音の取り方、アライメントの作り方が、
教科書に全て載っています。
「この通りに教えればバレエになる!」
確信しました。
が、日本人向けに書いてありません。
教科書通りに行うと、バレエ的な身体をもっていない生徒は、これでも怪我をしてしまう。
ワガノワメソッドを教科書からではなく、教師から直接師事していただかないことには始まらない、と思い、
今せっせと足を運んでいます。
最近学んだ7年生のカブリオール。
カブリオールは垂直に跳び、垂直に下りる。
なんとも単純明快な行い方。
私は、自分が怪我をした時、この行い方を知りませんでした。
どのように行うか具体的には指導されていなかったのです。
見よう見まねに過ぎなかった。
「このジャンプは上下運動だけ」
という理解が、その当時の私にあったなら、もしかすると怪我をしていなかったかも知れない。
講義を受けながら、こんなことが頭を過ぎりました。
過去は変えられません。
でも、これから未来のある子どもたちを正しく導くことは出来る。
師についた上で指導の現場にいる今なら、カブリオールの正しい行い方を
「それはあたりまえだな」
と、思えますが、
若い頃には、想像すらもできなかったことです。
正しいバレエ教授法。
これこそが生徒を怪我から守れる最善の法則だとひしひしと感じています。
そして、バレエ的な身体を持っていない生徒には、教授法に留まらないアプローチが必要なこともわかっています。
教科書が想定している前提条件と現実とのギャップを埋める必要があるからです。
それは、バレエに詳しいトレーナーさんとの連携で解決できると思っています。
バレエ教師がやるべきことは、常に正しい動かし方を教えること。
バレエそのものを教えること。
それが無理な生徒がいた場合、むしろそういう生徒のほうが多いですが、自分のバレエ教授法の理解を深めておくことで、トレーナーさんに何を解決してもらえばよいか具体的に指示できます。
その精度を上げるためにも、今後も精一杯バレエ教授法を学びます。
追伸
バレエダンサーを指導するトレーナーさんもバレエ教師も、正しいバレエを知ることで、より多くの生徒を怪我から遠ざけつつ高いレベルに上達させられるようになります。そのためのイベントを開催します。