バレエで大事なのは、形。
形の美しさがバレエの美しさです。
どのようにして美しい形に向かうか? 2つのアプローチをご紹介します。
バレエを習っている人ならば、誰でも憧れる「美しい甲」。
プロのダンサーたちの美しい甲を見ると、ため息が出ます。
彼女たちは、最初からあの美しい甲の形を手にしていたのでしょうか?
国立バレエ学校では、身体検査で柔軟性をチェックされます。
甲が柔軟であることは有利ではありますが、それだけで美しい形が約束されているわけではありません。
柔軟性のある甲でも、トゥシューズを履いた途端に崩れてしまう、ということがあります。
それは、オーディションで選ばれた子どもたちでも起こることです。
なぜ、そんなことになるのでしょうか?
「出した甲を維持する筋力がないから」
です。
柔軟性と筋力、このタッグが大事です。
さて、本題のアプローチについて。
トゥシューズに立ったときに美しい甲を作るには、2つのアプローチがあります。
一つは、解剖学的なアプローチ。
完成形を見て、 この形を作るには、 どの筋肉に力を入れ、 この骨をこの場所に置き………と、
完成された形に対して、その形に必要な筋肉と骨に働きかけようとします。
立つために必要な筋肉の強化と関節の柔軟性などを高めるためにトレーニングをする。
これは、 トゥシューズを履きながらのトレーニングではなく、
筋肉と骨というモノに対するアプローチと言えます。
もう一つの方法は、教授法に則ったアプローチ。
こちらはカリキュラムに従って、甲を出していくというアプローチです。
国立バレエ学校では、10〜11歳でトゥシューズを履きますが、この年齢の子どもたちにはまだ充分な筋力がありません。
ですから、筋力が徐々に育つに連れて求める形を段階的に変えていきます。
最初の段階: 足首を少し曲げても良いから、足裏を最大限縮める。 次の段階: 足首を徐々に伸ばすようにしていく。 etc. ………
このように最初から完成形を求めずに、生徒の筋力に応じてアプローチを変えていきます。
柔軟性が乏しい場合は、柔軟性をアップする「バレエ体操」で鍛えていきます。
「バレエ体操」は、国立バレエ学校では、カリキュラムの中に組み込まれています。
また、甲を出すには、足裏だけに注目してもうまく行きません。
上半身の形、膝の形、足首の形、趾の形など、全体の形を整えることが出来て
初めて甲が生きてくるのです。
教授法には、8年間でどのようにアプローチを変えていくか、ということが書かれています。
バレエでは、身体全体を使うようにアプローチしなくてはなりません。
足だけを切り取って、この骨・この筋肉などと、ことはそう簡単には進みません。
段階的に形を整えていくという教授法の知識がないと、完成形を求めて強化を行うことになります。
オーディションで選ばれる子どもだけでなく、大人から始めた方に対するアプローチの仕方も全く同じです。
教授法に則って、段階を追って「立つ」というところまで持って行きます。
解剖学的なアプローチ と 教授法に則ったアプローチ
は、別物です。
バレエが伸び悩んでいるとき、 解決策をどちらに求めるかで、得られる結果も違ったものになります。
そこを理解したうえで、お選びください。
参考記事 ワガノワ先生にとっての解剖学から思うこと