バットマン・タンデュ・ジュテ
と聞くと、あなたはどんな動きを思い浮かべますか?
なぜこんな質問をするかというと、同じような動きでもメソッドが異なると、
呼び名も動かし方も異なることがある、ということをお伝えするためです。
バレエの3大メソッドと言えば、ワガノワ・メソッドに代表されるロシア派、RAD、フランス派ですね。
チェケッティ派と言う人もいるかも知れません。
今回はジュテ/グリッセ/デガジェを研究します。
先ほどの
「バットマン・タンデュ・ジュテ」
これはロシア派での名称です。
では、このステップ、RADでは何と呼ぶでしょうか?
「バットマン・グリッセ」
です。
では、フランス派では何と呼ぶでしょうか?
「バットマン・グリッセ」
こちらも、RADと同じです。
チケッティ派の呼び方は、「バットマン・デガジェ」。
もう少し詳しく見てみましょう。
どれも見た目の動きそのものにあまり違いはないように見えます。
どこのバレエ教室もでも普通に見られる、バットマン・タンデュを通って床から足が離れる動きです。
名称が違うということは、使い方に差があるということです。
さて、どんな違いでしょうか?
もしこれが分からないとすると、メソッドが提示する正しい行い方ができていないことになります。
バットマン・タンデュ・ジュテ(ロシア派)では、脚の高さは25度(注1)、脚の使い方は強く放り投げる(注2)。※のちに、45度の高さまで上げます(注3)。
バットマン・グリッセ(RAD)では、つま先は床から2、3cmの高さ(注4)、脚の使い方は床を滑らせる(注5)。
バットマン・グリッセ(フランス派)では、バットマン・デガジェと同じ (注6)。
バットマン・デガジェ(チケッティ派)では、床から10cmの高さ、脚の使い方はバットマン・タンデュとほとんど同じ(注7)。
と、なっています。
みなそれぞれ使い方と空中の脚の角度が違います。
共通点は、どれもバットマン・タンデュを通過する、ということだけです。
実際動き分けてみると分かりますが、使う筋肉が随分と違います。
したがって、使い方によって筋肉の付き方が違ってきます。
どのメソッドで習ってきたか、体が立証してくれます。
どのメソッドも動きの意図が違います。
メソッドによって、名称も使い方も変わるということを認識していると、動きそのものに変化が現れます。
そしてその知識が、上達を助けてくれます。
注
1 『ロシアバレエレッスン ① 初級編 第1学年』 エマ・A・プリャーニチコワ著 音楽之友社 88p
2 『バレエ用語辞典』 川路 明著 東京堂出版 24p
3 『ワガノワのバレエ・レッスン』 アグリッピナ・ワガノワ著 新書館 11p
4 『ステップ・バイ・ステップ』 ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンシング編 文化出版局 62p
5 『バレエ用語辞典』 川路 明著 東京堂出版 24p
6 『バレエ用語辞典』 川路 明著 東京堂出版 24p
7 『バレエ用語辞典』 川路 明著 東京堂出版 24p