
グラン・プリエを行うとき、必ず言われることは
ドゥミ・プリエを通過すること。
脚だけでなく、腕に対しても言われることですね。
ドゥミ・プリエでは腕はヒストリカルの基本ポジションをしっかり通過させないといけません。
ここまでは皆さんご存知のお話。
実は、違う腕の使い方をするグラン・プリエが存在するんです。
まずは百聞は一見に如かず。
見てみましょう。
上記はアカデミー2年生のグラン・プリエです。
ドゥミ・プリエでは腕がヒストリカルの基本ポジションをしっかり通過しています。
これって、もしかしたらロシア・メソッド特有の動かし方かも知れません。
ロシア・メソッドでは、ドゥミ・プリエでは、腕を太ももと平行になるように、という指導はしません。
基準が脚にある表現は滅多にしません。
腕の動きでの基準は、どのポジションを通過させるか、です。
アカデミーの1年生で学ぶヒストリカルダンスには腕のポジションが6つあります。
その6つのうちの基本ポジションは、低い2番の allongé です。1番の腕の高さをそのまま保って開いたポジションです。
太ももに対して平行とは捉えず、腕のポジションとして考えます。
腕のポジションという基準があるので、その基準を使います。
ここで考えなくてはいけないことの一つとして、ドゥミ・プリエでの太ももの位置は、生徒それぞれで異なるということも挙げておきましょう。
太ももと平行という括り方では腕の高さがまちまちになりうる、ということを考えたら、この指導は適切ではありません。
腕のポジションは太ももに左右されてはいけません。
腕のポジションの概念を邪魔する、太ももに対して平行という表現は使ってはいけないのです。
そして、動きが発展したとき、この腕が太ももに平行という概念が動きを邪魔します。
それでは、発展形を見てみましょう。
4年生のグラン・プリエからのプレパレーションです。
このプレパレーションは回転のためのものです。
今後、このグラン・プリエのあと、回転につなげていきます。
腕の動きが2年生とは異なるのが見て取れます。
ここでの教授法的な動かし方は、
「allongé の腕を遅らせる」です。
ドゥミ・プリエのときに通過したヒストリカルの基本ポジションは、遅れて入ることになります。
ドゥミ・プリエのとき、腕を太ももと平行にする、という考え方とはまるで違うものです。
ポジションの通過を遅らせる、とだけ教えます。
遅らせたあと、ポドフヴァートさせます。※
「ドゥミ・プリエでの腕は太ももと平行」は、発展形を考えたら余計な指導ということになります。
そしてその余計な指導のせいで、間違った概念が生徒に出来上がってしまったら、後でそれを修正することは難しくなります。
概念を作らせずに、「ポジションを通過するタイミング」について教師は言及しないといけません。
大人リーナの皆さんは、グラン・プリエでの腕の運び方をどのように教わっていますか?
発展形を知っている教師は、タイミングのことしか言及しません。
太ももと腕が平行、とは指導しません。
それは、結果的にそう見えるだけであって、それを意図しているわけではないからです。
ここでも見える世界が全てではないということが言えますね。
教授法を知っている教師は、見える世界を伝えません。
見せたい世界へ導きます。
この差はとても大きいです。
ここでいつもの話になります。
生徒の皆さん、自衛が必要です。
見える世界だけを捉えた指導に惑わされないようにしてください。
見える世界は生徒にも見えるので教師の言っていることに共感しやすくなります。
共感できることに心地よさも覚えるでしょう。
だから、そういう教師にはファンがたくさんつきます。
でも、その心地よさと引き換えにあなたの上達が遠のきます。
なぜなら、プリエに限らず、間違った概念を持たされてしまうと、そこから修正するのは容易ではないからです。
もしあなたが心地よさより上達を優先するなら、見せたい世界のビジョンを持っているバレエ教師に学んでください。
そう、それがバレエ教授法を学んだ教師です。
ただし、見せたい世界は最初生徒さんには見えません。
見えないので、最初は戸惑うかも知れませんし、おそらく心地よくもないでしょう。
でも、もしあなたが心地よさより上達を優先するなら、
あなたの身近にいるかも知れない「なんちゃってバレエ教師」から遠ざかりましょう!
参考資料
※ポドフヴァートについてはこちらを参照
予習・復習・お手本動画を見ながら大人のオンラインバレエレッスン


