
先週金曜(2021.5.21)の「バスターズサロン」のテーマは作品深堀りシリーズ第一弾として『ジゼル』を取り上げました。
思いのほか好評で、今後も作品を深堀りしてほしいというご要望を頂いています。ありがとうございます。
「バスターズサロン」は、オンライン講座である「大人バレエのお悩みバスターズ」の一環として
毎月第3金曜の21:30から配信しているオンラインサロンです
毎回前半30分はYouTubeで無料配信しています。※1
興味のある方はぜひご覧ください。
今回『ジゼル』を深堀りするにあたって、様々な書籍を読みました。
原作の台本や、音楽的な観点からの解説などなど。
新しい発見が沢山あり、とても勉強になりました。
その中で特に興味深かった本をご紹介します。
『バレエの情景』(福田一雄著 音楽之友社発行)です。
福田先生の解説は本当に勉強になります。
以前(2017.3.28)、生徒がコンクールに出場した際の特別審査員が福田先生でいらっしゃいました。※2
コンクール審査後の特別講演が大変素晴らしかったのを今でも鮮明に覚えています。
その福田先生の書籍『バレエの情景』では、作品『ジゼル』の楽譜から読み取れる解説が書かれています。※3
その中で私が気になった部分を抜粋してご紹介します。
- ライトモティーフについて(133p)
- 未開発なシュール・レ・ポアント(140p)
- おどり半分、マイム半分(141p)
- ステパノフ・ノーテーション(143p)
- 各バレエ団によって楽譜が違う(154p)
あれ? 少しだけ紹介するつもりがなんだかこのブログもシリーズ化しないといけないような模様…
初回はライトモティーフについて。
このライトモティーフについては、スタジオにお招きして講演会を開いていただいた平林正司先生に教えていただいていたことがあります。※4
それ以来、この話をバレエ関係者にすると驚かれることが多いので、
まだ、あまり知られていないことのように感じています。
ライトモティーフとは、
ライトモティーフ(ライトモチーフ、独: Leitmotiv)とは、オペラや交響詩などの楽曲中において特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機を指す。単純な繰り返しではなく、和声変化や対旋律として加えられるなど変奏・展開されることによって、登場人物の行為や感情、状況の変化などを端的に、あるいは象徴的に示唆するとともに、楽曲に音楽的な統一をもたらしている。示導動機(しどうどうき)とも。〜Wikipediaより引用
ジゼルの主題である”愛”や、ヒラリオンの主題(なんだか心がざわつくあの旋律…)などで、登場人物がどのような人物なのか、ということを音で表す音楽的表現方法です。
実は、この音楽的効果で登場人物が悪役なのか、良い役なのかということを知ることができます。
問題はアルブレヒトとヒラリオンですね。
どっちが悪いのか? という論争が起きるくらいですから(笑)
ライトモティーフで捉えると
悪役はヒラリオンということになります。
音が二人の違いを物語っています。
もちろんアルブレヒトも悪い野郎(笑)なんですが、位が高いのでね。そこは仕方ないところでしょう(泣)
作品『ジゼル』の音楽だけを聴く機会がありましたら、このライトモティーフに焦点を当てて聴いてみてください。
登場人物によって、音が全く違うということがおわかりになると思います。
さて、ここで驚くべき事実を。
ライトモティーフで捉えると一番良い役というのがわかります。
このお話は平林先生に伺いました。
さて、その役は…。
はい、バティルドです。
うん?しっくりこない?
いえいえ、本当なんです。
バティルドは、アルブレヒトを許し受け入れてくれる聖母さまのような存在なのです。
それがライトモティーフに現れているんだとか。
初演時では2幕の最後に、バティルドがアルブレヒトを受け入れるところで幕が下ります。
ジゼルが、バティルドにアルブレヒトを託すわけです。
最後の最後にバティルドが登場して、全てを受け入れる。
このような演出でした。
今ではこの演出はなく、ジゼルの恋敵のように扱われていますが、実は違うのです。
音が物語っているわけです。
このような視点で作品『ジゼル』を捉えると本当に深みが増しますよね。
『ジゼル』をもっと詳しく知りたい方はニコライ・ツィスカリーゼ(ワガノワ・バレエアカデミー校長)の動画シリーズをご覧ください!※5
さて、今後続くであろう『ジゼル』シリーズ、お楽しみに!
本当に続くのか???
参考資料
予習・復習・お手本動画を見ながら大人のオンラインバレエレッスン


