世界的なバレエコンクールの日本大会が先日開催されました。
YouTubeにおすすめが出てくるので観ました。
違和感ありありでした。
その作品は、
『眠れる森の美女』第2幕のオーロラのヴァリエーション。
あのヴァリエーションで「笑顔」で踊っているダンサーがいました。
あのシーンは「ビジョン・シーン(幻の場面)」と呼ばれるシーンです。
そこでのオーロラの表現についてマリア・ホーレワが語っていますのでご覧ください。
人間的ではない存在、空気のように、妖精のように
ですね。
想像の中での映像ですので、無表情がいい感じがします。
ここで、永久メイさんの踊りを観てみましょう。
無表情です。
「舞台はとにかく笑顔!」
と思っている日本のバレエ関係者は多いと思います。
「舞台で笑顔で踊るために、普段のレッスンでも笑顔にするように」
という指導をする教師がいるという話を聞いたことがあります。
何でも笑顔というのは、台本は無視しているということになります。
ヴァリエーションをテクニック的に踊るという価値観から抜け出さないといけない。
ヴァリエーションは作品の中の一部分です。
台本を理解せずに踊らせることが、バレエ教育とは考えられないです。
バレエ教師はテクニックだけ教えていればよいのではありません。
作品を通して踊りを理解させていく。
これが教育です。
世の中は便利になり、動画もたくさん出回っています。
こんなにも情報に触れられる機会があるのに、正しい情報は受け取れていない。
これが今の日本のバレエ教育の現場なのかもしれません。
「そうは言っても、やはりコンクールだから笑顔は最低限必要」
という声もあるかと思います。
そこまで笑顔が大事なら、笑顔が似合うヴァリエーションを選ぶべきです。
無表情であるべきものをわざわざ笑顔で踊らせるなんて、私なら絶対にしません。
それは作品へのリスペクトを欠く行為だからです。
もし生徒の受賞や教室の名声のためだとしたら、それは傲慢が過ぎます。
そもそも教師が台本を理解していないということだとすると、目も当てられません。
そういった踊りに賞を与えてしまうコンクールがあるとしたら、存在意義はあるのでしようか?
少なくともバレエ教師には、何がしたいのか、何をさせたいのか、正しい知識の下に明確なビジョンが必要です。